「美しき挑発 レンピッカ展 本能に生きた伝説の画家」
渋谷のBunkamuraで「美しき挑発 レンピッカ展 本能に生きた伝説の画家」を観てきました。またまた知らない、今回初めて知った画家だったのですが、いやぁ、良かったですよ。金子國義のような雰囲気もするし、球体関節人形のようなフォルムを持った描写はなまめかしさを強調し、髪の毛などはレゴブロックの人形のかつら(?)のようにデフォルメされて一つの象徴としての意味さえ持っているように思えました。なんとも不思議な魅力を持つ絵を描く人だったんですね、レンピッカさん。
タマラ・ド・レンピッカは十九世紀末のロシアに生まれ、世紀末・黄金の二十年代をフランスで過ごし、戦後やニューヨークに引っ越した。特にアール・デコの時代に活躍し、上記に述べたような雰囲気を持つ数々の肖像画を描いて名声を博した。その美貌を活かし、自らも写真のモデルとなって社交界の華となり、モードを動かす存在となっていった。だが、戦後のニューヨーク時代には画風をがらりと変えた作品を描くようになるも人気は低迷、残念ながら世間からは忘れ去られてしまった。そして、晩年近くなって再評価されるようになり、今に至っている。
今回の展示は、そんな波瀾万丈の彼女の人生を追うように、以下のように年代順に作品を紹介している。
プロローグ ルーツと修行
第1章 狂乱の時代
第2章 危機の時代
第3章 新大陸
エピローグ 復活
その中で私が気に入ったのは、「狂乱の時代」に自分の一人娘キゼットをモデルにした作品。「ピンクの服を着たキゼット」と題されたその作品は、プリーツがきれいな服を着た女の子が本を読むのをやめ、首をちょっとかしげてこちらを見ている。白いソックスに白い靴。だが、片方の靴は脱げてどこかに行ってしまっている。うむ、まさにナボコフの「ロリータ」の世界ですよ。なまめかしいその眼差しに捉えられ、しばし見入ってしまいました。それほど少女性愛の嗜好を持ってはいないと自分では思っていましたが、そんな私でもこの作品には惹かれてしまいましたね。いやぁ、参りました。
娘を描いた作品は他にもあり、「ピンクの・・・」から五・六年後に描いた「緑の服の女」がそれ。ポスターになっている作品ですね。見ての通りに緑のドレスを着ているものの、ちょっとふくよかなボディラインにぴったりと張り付いていて、なんとも官能的。我が子だからこそ、少女から女へと成長し、変化していく瞬間をとらえられたのでしょう。
ということで他の作品の紹介は割愛。会期はまだまだありますので、ぜひ本物を見てみてくださいな。おすすめです。
会期 :2010-03-06(Sat) -- 05-09(Sun) 開催期間中無休
開館時間 :10:00-19:00, 毎週金・土曜日21:00まで(入館は20:30まで)
入館料 :1,400円
レンピッカ (ニューベーシック) (ニューベーシック・アート・シリーズ)
- 作者: ジル・ネレ
- 出版社/メーカー: タッシェン
- 発売日: 2002/12/19
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
Tamara De Lempicka (Bloomsbury Lives of Women)
- 作者: Laura Claridge
- 出版社/メーカー: Bloomsbury Publishing PLC
- 発売日: 2010/03/15
- メディア: ペーパーバック
この記事へのコメント
ポスターの影響かもしれないけれど。
これ、かなり気になっていました。
艶かしい表情の描写が凄く好きです。
一時期、世間から忘れられていた人とは思えませんよ。一見の価値ありです。
Rangerさんへ:
五月から兵庫県立美術館でも開催されるそうですよ。
ピンクのと緑のがお気に入りだったんですね。
私は、緑の服のとブルーのシュジー・ソリドールが気に入りました。
リンクをつけさせてくださいね。
そう、かなり気に入ってしまいました。どの作品も独特の雰囲気がいいですよねぇ。
リンクでも何でも大歓迎です。